MALTリンパ腫(extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue)は
1983年にIsaacsonら1)によって提唱された低悪性度B細胞性リンパ腫である.
好発部位は消化管,眼・付属器,甲状腺,唾液腺,肺などであるが,最も発生が多いのは胃である.
胃MALTリンパ腫の多くはHelicobacter pylori(H. pylori)感染による慢性胃炎を背景に発生し,除菌治療によって寛解に至る.
胃MALTリンパ腫の発育は緩徐であり一般に致命的となることは少ないが,他臓器へ浸潤したり,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に形質転化した症例も存在する2).
原発性胃悪性リンパ腫の肉眼分類は佐野分類3)により,表層型,潰瘍型,隆起型,決潰型,巨大皺襞型の5型に分類されるが,
胃MALTリンパ腫では表層型が最も多い.
表層型をさらに,早期胃癌(0-IIc型)類似型,胃炎類似型,隆起型の3つに分類すると,前2者がその大半を占める4).
早期胃癌類似型胃MALTリンパ腫(Fig. 1a)では早期胃癌に比べて病変範囲が不明瞭であることが多く,
蚕食像や表面模様の無構造化が観察されない4).
また,多発病変であることも特徴である.
胃炎類似型(Fig. 1b)では内視鏡診断の正診率は低く,
内視鏡所見や臨床経過が非典型的でない胃炎に関しては積極的にMALTリンパ腫を疑って生検を行う必要がある4).